“人 災” そ の 後
有明鉱火災から1ヶ月
その1
死者83人、CO中毒患者16人を出した三井石炭三池鉱業所有明鉱の坑内火災事故から18日 で1ヶ月。あの日降った雪は間もなく消えたものの、遺家族は悲しみと怒りに耐える日々が続い ている。坑内密閉個所の現場検証も16日から始められ、いよいよ“人災”の核心にメスが入る。 弔慰金の上積み交渉もヤマ場を迎える。それぞれの問題の現状を見ると…。 捜 査 「複合過失」立件へ自信 法的裏付けの検討開始 福岡鉱山保安監督局と福岡県警の捜査は16日までに、炭鉱の業務内容や管理体制などにつ いての基礎固めの段階を終った。今後の捜査のポイントは@出火場所となった220m連絡斜坑 の第10BC(ベルトコンベヤー)の発火原因と予見可能性A集中監視制御室の火災初期の対応 と避難誘導の方法―の二点にほぼ絞られる。 これまでの調べでは、上下二本のBCの間にボタ(岩石)がはさまって蛇行し、BCの上にかぶ せてある箱門と呼ばれる木製のボックスに接触、摩擦熱で発火して通気門から坑道に燃え広 がったとみる説が有力になっている。BCの監視体制も、会社側の資料では、「係員が1日3回巡 回した」としているが、三池新労は「ベルト当番はおらず、1日1回の巡回も十分に行われていな かった」と反証している。「1時50分」とされる制御室の出火確認時間も、それ以前に知っていた との疑いも出ている。 最も注目されるのは、49人が死んだパイプ坑道を巡る誘導措置。出火当時、パイプ坑道は拡 張工事のためボタが堆積していた。会社側は「パイプ坑道へ避難誘導した事実はない」と公式に 否定している。しかし捜査陣は、「パイプ坑道を伝って逃げろという制御室からの無線指示を聞い た」という複数の証言を得たという情報もある。ある捜査幹部は「避難誘導のミスは動かし難いよ うだ」と立件への自信を語った。 業務上過失致死傷で立件の場合、いずれの問題も平常時の保安管理システムと事故発生後 の指揮・判断という複数の要因が絡む「複合過失」となる。捜査当局では、機器の多用時代を象 徴するような過失概念の法的裏付けの検討も始めている。 現場検証、専門家の鑑定、会社幹部の事情聴取を経て捜査の決着がつくのは約1年後とみら れる。会社幹部の逮捕劇はなく在宅のまま書類送検される可能性が大きい。しかし、不起訴と なった三川鉱炭じん爆発事故が学説のくい違いや“政治的判断”に助けられた感じもあるのに 比べて今回の事故の原因が比較的単純な事は明らかだ。裁判になれば「三井の罪」が初めて 刑事的に認められるのではと予測する声も出ている。
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