A.坑内の一般知識
1.石炭の知識 (1)石炭はどうして出来たか 欧米では1億年〜3億年、日本では5千万年前に出来たもので、昔繁茂したシダ、トクサ、針葉樹、広 葉樹などが地中に埋れ、圧力、地熱、バクテリア等の影響で、炭化作用を受けて出来たものである。 (2)石炭の種類 炭化作用の進んだ状態から順々に、石墨、無煙炭、瀝青炭、褐炭、亜炭、泥炭がある。日本では現 在、無煙炭、歴青炭、褐炭等が出る。 (3)石炭はどの様に利用されているか イ 製鉄用コークス ロ 都市ガス ハ 火力発電 二 化学工業原料 ホ 燃料用 へ ボイラー、ストーブ等の熱源用 2.石炭鉱業 (1)日本の石炭の生産量 日本の石炭は、わかっているだけの炭量で約84億4700万tあり、年間約2000万tの出炭をしている。 地域別では、九州‐45%、北海道‐55%の割合である。 (2)石炭産業の重要性 石炭は地球上で最も多いエネルギー源である。人間が生活していく限り、今後共色々なエネルギー が開発されて行く必要に迫られ、その中で石炭は、エネルギーの根幹としての地位を今後も保持して いくと考えられる。特にエネルギー危機が叫ぱれている今日、日本に於ける数少ないエネルギー資源 の中では、石炭は重要なものである。我国の石炭政策の中で、今後約2000万t/年の石炭を生産し、 産業用として利用するよう決められ、石炭ガス化、液化の研究と共に、利用価値も高められ、将来まだ まだ、石炭産業は安定した産業であるといえる。炭鉱の技術の発達、設備の改革による生産性の向 上は、今の若い人達によって支えられて来ている。日本のエネルギー確保のため、石炭を掘ることは 絶対に必要である。 |
1.沿革、組織 (1)所在地 本所 福岡県大牟田市原山町178番地 四山鉱 大牟田市四山町81番地 三川鉱 大牟田市西港町2丁目28番地 有明鉱 三池郡高田町大字昭和開1番地 (2)沿 革 文明元年 約500年前稲荷山に於いて、一農夫が焚火して、燃える石を発見した。 明治6年5月 官営になる。その後大浦、七浦、勝立、宮浦立坑の開さく。 22年1月 三井家の経営に移る。 44年11月 三井鉱山株式会社設立。四山立坑(大正9年5月)宮浦斜坑(大正12年3月) 昭和14年5月 三川斜坑完成。 26年8月 初島完成 その後、昭和29年7月 立坑完成。 33年12月 港沖立坑完成。 40年8月 四山鉱港沖へ移転。 44年1月 宮浦鉱三川坑口ヘ移転。 45年9月 三池島完成。 その後、昭和48年5月立坑完成。 48年10月 三井鉱山より分離。三井石炭鉱業株式会社設立、有明炭鉱発足。 52年10月 有明炭鉱株式会社を吸収合併、有明鉱発足。 (3)各鉱について @四山鉱 三池港の突堤にある港沖立坑を坑口として稼動している。S40年大島の旧四山立坑から、今の港沖 へ移転し現在に至っている。520m坑道を幹線として、600mレベル以深の炭層を稼行しているが、三池 で一番の深部採掘に当る。出炭は三川大斜坑を利用して、選炭場へ揚炭される。 A三川鉱 三池港近くの諏訪川の傍に斜坑口を持ち、稼動している。以前は万田立坑を坑口としていたが、S15 年10月今の所へ移転した。350m坑道を幹線として、広く採掘し三池炭鉱の中心であり、設備的にも通 気、排水、運搬の主要な部分を占めている。 B有明鉱 三井鉱山がS48年3月、日鉄鉱業から委譲し、有明炭鉱株式会社として発足した。軟弱な地盤と、水に 苦しめられたがS49年12月26日に着炭、S52年10月三井石炭と合併した。320m坑道を幹線として展開 しているが、硫黄分の少ない粘結、膨張性に富んだ優れた石炭を産出している。なお産出された石炭 は、三川鉱を経由して、選炭場へ揚炭されている。 2.地 質 (1)地 質 三池炭田は、東西約20km、南北約25kmあり、地層は新生代古第三紀に属する。砂岩を主に頁岩と 礫岩をはさみ、炭層は有明海に向って傾斜し広がっている。 三 池 炭 鉱 模 式 断 面 図 (2)炭 層 炭層は9層あるが、稼行中の炭層は、本層、上層、第二上層の3層である。 2002.6.29作成 |
・炭鉱はどんな構造か 地表から炭層に到達する為に、斜坑、立坑により開坑する。次に立入、水平坑道(主要)、片盤坑道 を作り、切羽を作る。坑道には岩盤と沿層とがあり、区画を決めて計画的に採炭する。 1.坑 内 作 業 (1)採炭と採炭方式 石炭を掘る場所を切羽と云い、三池では採炭する方法として、次の二つの方法があり、中でもその大 部分が長壁式である。 @長 壁 式 長壁式とは、採炭する切羽面を100m〜110mの長さにとり、炭層全部を一度にとる。又炭層が厚い時 は二段に分けて採掘する。 A柱 房 式 片盤坑道から、一定の区画を決めて、その区域を小切羽で炭柱を残し、一部を採掘する。 三池では、四山、三川、有明共海底下の採掘で概況は次の通りである。
B長壁式分層払について 炭層の厚さが4m〜6mに達する所は、全部を一度に採掘するのは、危険を伴い困難性がある。又採 掘率をあげるため二段に分け(上段)(下段)採掘している。上段払を先行して採炭し、その時に下盤に 金網を敷き、下段払の人工天盤を作る。そして下段払が後から追っかけて採炭をして行く方法である。 払内にはシールド型自走枠とドラムカッターとの組み合わせによる長壁払が多い。 (2)掘 進 次の払の切羽面を作る為の準備作業(坑道掘進)で、炭層を掘進する沿層坑道掘進と入排気坑道、 主要運搬坑道等の骨格を作るための岩盤坑道掘進がある。 何れも各種掘さく機を使用し、全面発破 方式で、積込みは沿層はフェスローダーを使用し、P.C(パンツァ・コンベア)及ぴB.C(ベルト・コンベア) を経て炭車へ、又岩盤掘進では、サイドダンプで積込みを行い炭凾に殆ど直積みをしている。坑道は 水平だげでなく、傾斜したり、立坑のように垂直の場合もある。 (3)仕 繰 坑道の保坑や、採炭のための準備作業をする。作業の範囲は広いが、枠張り、切上げ、切拡め、盤 打ち、車道布設、材料準備等がある。 (4)運 搬 石炭、硬、材料、作業員等を運ぶ重要な作業で、電車やホーリングの運転に伴う鉱車の連結、切り 離し、列車の操作等の作業がある。掘った石炭は次のような方法(系統)で搬出される。 四山、三川、有明の全石炭は、三川の大斜坑から運び出されて、選炭機にかけられる。そして港務 所貯炭場へ送られる。又三川 350m坑道は三川、有明鉱、520m坑道は四山鉱の石炭を大量に運ぶ ため、大型炭函(5立方m)が26t電車により運行されている。 (5)通 気 特に大切な分野で、坑内の環境の改善のために、日夜努力が続けられている。坑内の採掘区域の 移動に伴い、通気の諸施設の設置、補修、其の他通気を保つための作業が行われる。 有明と三川、三川と四山は各々部分的に坑道が連絡している。それは通気上でもつながっている事 になる。 @通気の目的 イ 坑内で作業する人の呼吸に必要な空気の供給。 ロ 坑内で発生するメタンガス、その他を新鮮な空気で危険のない程度にうすめて排除する。 ハ 呼吸時の炭酸ガスや、石炭、坑木の酸化、発破のあとガス、其の他の有毒ガスをうすめる。 二 地熱、機械の熱、石炭や坑木の酸化熱を下げ、又湿度を下げて働きやすいようにする。 A通気の方法 イ 主要通気 排気坑口に主要扇風機を設置し、これを回転させ空気を吸出すことによって行う。三池では現在、新 港立坑、初島、有明第二立坑に主要扇風機が据えられている。 ロ 局部通気 局部扇風機等によって、坑内の隅々まで風を通すこと。これは圧気又は電気の局部扇風機にビニー ル風管を使い、殆んどの場合吹込式としている。 B通気施設 イ 風門(遮断門、分量門) コンクリート門、ブロック門、板門等がある。 ロ 風管(ビニール、鉄、樹脂材) ハ 扇風機(圧気、電気) ニ エアーゼット、エアームーバー ホ 張切り へ 風橋 ト 密閉(コンクリート、ブロック、板張、ビニール、フラィアッシュ) 等があり、坑内深度が深くなり、地熱のために通気温度が高くなる所は冷凍機を設置し、空気冷却を 行い環境改善に努めている。これらの通気に対する色々な施設は、勝手にこわしたり、変更したりして はいけない。又これらの設備の異常を発見した時はすぐに、係員に連絡をし、復旧するように心掛ける こと。 (6)排 水 坑内で水が出る原因に、地下水や、散水、冷却水等の捨水による採掘跡の溜水がある。一たん出た 水は必ず処理する必要がある。排水作業は炭鉱にとって、寸時も忘れることは出来ない仕事である。 坑内で排水する一般的な方法は、水を集めるために集水バックを作り、これにポンプを据え付けて揚 水する。 揚水パイプ(鉄、塩ビ)を通り、中間バックに集める。 更にそこで中容量、中揚程のポンプによ り、本線の主要排水溝などに流され、坑底ポンプ座のバックに集まる。 そしてここから大容量、高揚程 のポンプで一気に坑外迄揚水される。 三池では年間平均毎分約100立方mの排水量で他地区より多く、1tの石炭を出すのに約10立方mの 揚水をしている。その為約490台(S53)57,000kwの施設を有している。 (7)その他 坑内の諸設備を設置、移転、撤去さらに運転、保全などをするため機械、電気の作業があり、その他 自走枠の設置、撤去や、充填、回収、保線、測量、観測、保安などに関する作業がある。 1.坑 内 の 作 業 職 種 三池炭鉱における坑内作業の職種は次の通りである。 イ) 採炭員 主として石炭の採掘に従事 ロ) 掘進員 主として坑道の掘進に従事(岩盤、沿層) ハ) 運搬員 石炭の搬出、諸材料、人員、ボタの搬送 二) 仕繰員 石炭を採掘する為の準備作業、坑道維持 ホ) 機械員 諸機械の据付、移転、撤去、運転、補修 ヘ) 電気員 電気機器の据付、移転、撤去、補修 ト) その他 測量員、坑内特務員、検収員、試錐員 石炭を掘るためには、色々な設備や動力を使い、それらを動かす人々が一緒になり、協力し合って 働いている。その為に数多くの職種があるわけだが、目的は全て石炭を安全に、能率良く坑外まで搬 出する事である。 だからどの職種も重要なものばかりであり、ひとつでも作業にミスがあれば、採炭作業がストップする 事になるだけでなく、保安上にも重大な影響がある事を考え、自分の職務を確実に実行する事が大切 である。 2002.7.7追加 |